多世代参加型スポーツ

   太極拳は年齢や体力が異なる人々が、同じ場所で同じ動作を一緒に練習することができる。動作は、
 膝を曲げ、腰を沈めて、重心を一定の高さに保って、ゆっくりと呼吸に合わせて行う。筋力や柔軟性
 のある人は重心をわずかに低くすることで、大腿筋等への負荷が増して、大きな運動量が得られる。
 初心者や年配者は高い重心で行い、熟練するにつれて低い姿勢で行うようにする。
 一般のスポーツでは、ルールに応じて参加者の体力と年齢がおのずと限定され、青少年のスポーツと
 中高年のスポーツが分離される。太極拳は多世代にわたる愛好者が一緒に参加できる点でユニーク
 なスポーツである。年配者は若い世代と交流しながら練習に励むことで、精神的な活性化が得られ、
 若い世代は年配者の言動から学ぶことが多い。現代社会におけるスポーツ文化として、有益な価値を
 備えているといえる。実際に孫はカンフー遊びや長拳を、お父さんやお母さんは地域や職場の近くの
 太極拳教室に通い、おじいさんやおばあさんを誘うといった、一家三世代が愛好者である家族も多く
 見られる。

太極拳の多面性

愛好者は  1)武術として、
       2)健康法、医療体育として、
       3)芸術的な表現スポーツとして
       4)競技スポーツとして、
など太極拳が備えている多用な要素を求めて参加してくる。
 1990年の「第11回北京アジア競技大会」と1994年の「第12回広島アジア競技大会」の正式実施競技に
採用され、1993年5月に中国・上海市で開催された「第1回東アジア競技大会」でも正式実施競技になる
など国際的な競技スポーツとしての発展も著しい。
 このように、太極拳は「生涯スポーツ」と「競技スポーツ」の両分野で、幅広い年齢層の愛好者・選
手が参加し、多面的な要素を持つスポーツである。

演武スポーツとして発展〜力と技と美の表現スポーツ〜

 中国武術は種目(流派)が多く、攻防の技法が多種、多様であるので、格闘技としての共通ルールを
設定することが比較的難しい。各々の種目は、攻防の技法と力の用い方に明確な理論と特徴を備えて
いるので、型を訓練する方法が発達してきた。各種目の型演武による試合方法が発達し、武術としての
正確な技法と力の用い方を競う「競技スポーツ」に発展してきた。
 各々の種目の技法を、合理的な動きで、正確に、精神を集中して行う結果として、運動美を表現する
スポーツの要素を備えることになった。型演武の試合形式による、力と技と美を競うスポーツとして国
際競技スポーツとして定着している。
 一方、近年は格闘技としての伝統的な訓練方法である組手訓練法(太極拳推手)が大衆的に行えるよ
うに再開発されて、太極拳愛好者の中で普及し始めている。

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